編集長の思い出 第3話 クリスマスイブの告白

 


 2019年12月24日の夕方だったと思います。箱根湯本の駅前で待機していると、若い女性が声をかけてきました。
 「運転手さん、このレストランにお願いしたいんですけど。」とメモを見せられました。強羅にある有名なステーキハウスです。
 「かしこりました。」とドアを開けると、
 「メーターは入れてもらって構いませんが、連れの男性がすぐに来ます。その男性には行先を悟られないようにしてもらえますか。」
 何かご事情がある様子。
 「実は今日、彼に告白するんです。このレストラン、相応しい場所かちょっと心配で。」
 なるほど、そう言うことですか。
 「バッチリなシチュエーションだと思いますよ。」

 しばらくすると、男性がやってきて乗車されました。強羅までの20分間、お二人は大学やサークルの話を楽しそうにされていました。
 恐らく、同じ大学のサークルにいらっしゃって、男性が1学年上のご様子。

 強羅のレストランに到着すると一旦、お二人は降車され、女性がお支払いをされました。
 「運転手さん、ありがとうございました。なんか上手くいきそうなきがしてきました。」
 「頑張ってくださいね。応援してますよ。」

 残念ながら、私は強羅の担当ではなかったので、お帰りは担当することができませんでした。
 今でもクリスマスイブが来ると、あの時のお二人は今どう過ごされているのかと、ふと頭を過ります。