長安寺で五百羅漢を楽しむ
箱根の仙石原に五百羅漢が楽しめる古いお寺がある。曹洞宗龍虎山長安寺だ。曹洞宗は中国の禅宗五家の一つで、日本では鎌倉時代に道元によって広められた。 日本の総本山は福井県の大本山永平寺と横浜市の大本山總持寺。
長安寺の建立は延文元年(1356年)。当時、大涌谷は大地獄と呼ばれ信仰の対象だった。地獄を信仰する人たちによって大涌谷の麓に姥子山長安寺として小さなお堂が建立されたのが始まり。明暦元年(1655年)、お堂が老朽化したことから機山労逸(きざんろういつ)大和尚が現在の仙石原に姥子山長安寺として開山した。
現在も残る本堂は開山当時のもので、現住職の鈴木太源和尚は第二六代目。
駒澤大学文学部歴史学科を卒業し、永平寺で修業後、教員生活を経て昭和54年(1979年)から40年以上の間、このお寺を守ってきた。
昭和60年(1985年)から、お詣りに来られる人の癒しの場になるようにと石仏を置いて羅漢山を作り始めた。羅漢とは悟りを開いた高僧のことで、お釈迦様に従った500人の弟子やその姿を象った像のことは五百羅漢と呼ばれる。
現在までに境内に置かれた石仏は280体。目標は500体。檀家でなくとも施主にはなれるそうで、施主になると石仏が境内に置かれ、本堂には名前が書かれた札が掛けられる。
普通、五百羅漢は一人の職人や作家、もしくはその弟子によって製作されるが、同じ顔にならないように一四人の作家に製作を依頼しているので、様々な表情や姿の石仏に出会えるユニークな羅漢山となった。
長安寺は仙石原交差点の奥にある。歴史を感じさせる石柱門を過ぎ、山門をくぐると境内だ。お寺なので最初にお参りしよう。
本堂前の賽銭箱に賽銭を入れて手を合わせる。お寺なので手を叩くのはNG。お参りの後は本堂左側の参道にゆっくり進もう。
小高い山に石仏がずらりと並ぶ光景が視界に入る。お辞儀をする人や酒を酌み交わす二人組、仲間の肩たたきをする男性、両手を広げて空を見上げる人など行くたびに新しい石仏と出会え、心が癒されるはずだ。
山の上には商売繁盛の御利益で知られる豊川稲荷の社もある。時間があれば是非、合わせてお詣りしたい。
なお、長安寺は10月下旬から11月一杯は紅葉も楽しめるので、秋の散策にお薦めだ。
※※上記内容は本紙2025秋号第一版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。
長安寺で五百羅漢を楽しむ
