元箱根の石仏群散策
春の箱根には散策にお薦めのコースがいくつかあるが、今回は元箱根石仏群を巡るコースを紹介しよう。場所は国道一号線の元箱根港の手前にある精進ヶ池周辺だ。
本紙お薦めのコースは六道地蔵バス停からスタートする。バス停から元箱根に向かって歩くと右側に駐車場がある。数年前まで石仏群の資料などを展示していた歴史回廊館と呼ばれる建物があった場所だ。残念ながら歴史回廊館は老巧化のため取り壊されてしまったが、散策コースは健在だ。
精進ヶ池の湖畔に沿った小道を六道地蔵と書かれた標識に従って進もう。途中、標識に従って右に曲がり、トンネルを潜ると目の前に木造の覆屋(おおいや)が現れる。中に座高3.2メートルの大きな六道地蔵を見ることができる。1300年に完成したとされている。
700年前、精進ヶ池周辺は火山活動が続いており、当時の人はこの地を地獄だと認識しており、旅の安全を祈願して地蔵菩薩を掘ったらしい。この後に紹介する多田満仲(清和源氏発展の礎をつくった武将)の墓、二十五菩薩、曽我兄弟の墓も俗称で六道地蔵と同様に地蔵信仰で彫られたものだ。
六道地蔵の後は精進ヶ池湖畔に沿った小道に戻りさらに進む。7~8分で道を塞ぐようにそそり立つ多田満仲の墓と呼ばれる石塔に出会う。 突然現れるので、少しびっくりするかもしれない。さらに進むと菩薩像が沢山掘られた大きな岩が見えてくる。二十五菩薩だ。
岩に彫られた文字から1293年に彫られたと言われている。この岩に大小23体、トンネルを潜って国道1号線の反対側の岩の両面にも3体彫られており、合計26体が確認されている。この場所から2分ほどで最後の曽我兄弟の墓に辿り着く。
曽我の仇討で知られる曽我兄弟(兄十郎、弟五郎)と十郎の恋人虎の御前の墓と言われているが、実際には前述の通り地蔵信仰で造られたものだ。ここまで、各スポットでの滞在時間を含めて45分程。帰りは来た道を戻っても良いが、国道一号線の歩道を歩いて戻れば出発した駐車場まで10分ほどで戻ることができる。バス利用の場合は曽我兄弟の墓バス停から乗車されるのが良いだろう。
※上記内容は本紙2025春号第二版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。