編集長の思い出 第8話 豪州人は札幌が嫌い?

 


 去年の春だったと思います。強羅駅から三人の外国人の方がお乗りになりました。恐らく中年のご夫婦と息子さん。行先は小田原駅。
 最初は皆さん黙っていましたが、宮ノ下でお父様が日本語で話しかけてこられました。
 「これは何ですか?」
 「富士屋ホテルです。1878年創業の箱根を代表するホテルです。」
 「素晴らしい。それから、私の日本語が通じて嬉しいです。」
 「お上手ですよ。どこで日本語を勉強されたんですか。」
 「30年程前に福岡で仕事をしていました。それで日本語を少し覚えました。妻ともそこで知り合い、結婚しました。
  今は家族でオーストラリアに住んでます。」
 「では、30年ぶりに日本に来られたんですか。」
 「そうです。息子がアニメ好きで日本語を覚えて、日本に行きたいと行ったので、連れてきました。」
 「息子さん、アニメは何が好きですか。」
 「ガンダム、ワンピースも面白かったけど、今回はエヴァンゲリオンの舞台になった箱根に来ました。」
 「箱根はどうでしたか。」
 「仙石原の風景が素晴らしい。温泉も良かった。」
 そこでお父様が、
 「私たちは東京に戻りますが、日本には暫くいます。どこかお薦めはありますか?」
 「京都も良いし、札幌もお薦めです。」
 「京都は箱根の前に行ってきました。サッポロはきらいですね。」私が大好きな札幌が嫌い?それはなぜ?
 「なんで札幌が嫌いなんですか。」
 「昔、仕事で行きました。夜景がワンダフル、食事も美味しい。」そこで、私はピンときました。ひょっとして・・・、
 「ノットライク イズ キライ。ビューティフル イズ キレイ。」(この英語が正しいかは別にして)
 「おー、間違えていました。サッポロは奇麗です。大好きです。」やっぱり。間違えに気が付いてもらえて良かった。
 息子さんが、
 「サッポロに行ったら、何が美味しいですか。」
 「海鮮丼も美味しいけど、味噌ラーメンもお薦めです。」
 「ラーメンは○○屋で食べました。美味しかったです。」福岡の豚骨ラーメンのお店です。
 「○○屋なら豚骨ですね。サッポロラーメンなら味噌がお薦めです。」
 「豚骨?味噌?」日本のラーメンは地域によってスープや麺の作り方が異なることを説明してあげました。
 小田原駅で降車される時、お父様から、
 「今日は久しぶりに日本語で話せて楽しかったです。来週、サッポロに行ってみます。いろいろとありがとう。」
 とお声をかけてもらいました。

 ほんのちょっぴり国際貢献ができたかなと感じたお客様でした。