編集長の思い出 第15話 何か粗相が・・・

何か粗相が・・・?
或る年の連休最終日の話。お客様をお迎えに行きました。高級ホテルです。お乗りになったご夫妻はちょっと不機嫌。
どうやら前日のディナーで別注で注文したお料理が注文と違った様子。サービススタッフは間違えたことを認めたのにもかかわらず、料理の交換に応じなかったとのこと。内心、「そりゃ怒るわなぁ。」と頷きながら聞いていましたが、外は暑いのに車内は木枯らしが吹いているような感じです。もう何度もその宿にお越しのようですが、もう2度と行かないと奥様。
その後、旦那様が場の雰囲気を変えようと思ったのか、「そう言えば、あの話はどういうこと?」と奥様に聞かれました。
奥様はその話の事情を話始めましたが、あまり楽しい話ではありません。奥様もあまり触れて欲しくない話題だったようです。
途中で旦那様が「あっ、その話もう聞きたくない。」と言ってしまった。
奥様は「貴方が聞きたいって言ったんじゃない!」と怒りが爆発。
木枯らしが吹いていただけだった車内にいきなりシベリアの寒気団が来てしまったような空気の激変。
そんな時に限って1号線は大渋滞。とにかく音を立てないように慎重に車を操作します。普段なら20分ほどの行程なのに、無限に感じる車内の時間。しかし、努力の甲斐あって、50分程で目的の駅に到着。
無事にお二人は降車されました。
ホッとしながら、後部座席にお忘れ物が無いか確認していると、奥様が戻ってくるのが視界に入りました。
「えっ、忘れ物。それは無さそう。じゃ、何か粗相・・・?」
「お、お忘れ物ですか?」
「あっ、車内の雰囲気が悪くなってごめんなさい。渋滞で大変だと思いますけど、お仕事頑張ってくださいね。」
「ありがとうございます。また、是非お越しください。」
と言うことで、それまでの重たい気分から、とても晴れやかな気持ちになりました。お客様からの一言って大切ですね。