編集長の思い出 第14話 住まいが決まった瞬間


 

住まいが決まった瞬間

 2016年夏、ひときわ暑く感じる夏でした。暑いじゃなくて熱いと言う感じの夏。気温が高い上に、2016年は箱根への移住に向けて具体的な活動を始めた年だったので、より熱く感じたのでしょう。2週間に一度、金曜日の深夜に愛車で東名高速道路を300km走り、土日に箱根の宿の面接を受けて、日曜日の夜に当時住んでいた名古屋に戻ると言う今から考えるとかなりタイトなスケジュールをこなしていました。
 ある宿の社長面接の後、愛車で箱根湯本駅に向けて1号線を走っていたところ、湯本駅前に入ったところで対向車の運転席の男性が何か大声で叫んでいる。窓を開けると、
「みまさ~ん、みまさ~ん、メール見ましたかー?」箱根のマンション探しを依頼した不動産会社の店長の方。
 半年前に条件を伝えてマンション探しを依頼したものの「条件が厳しいですね。」と言われ、連絡が来なかったため、半ば諦めていました。
 条件は予算、間取り、1階、自然の景色、フローリング、掘り炬燵があることなど。
 車が横に並ぶと、後ろに車が並んでるのも構わず、
「今日は何しに来られたんですか?」
「今日は社長面接でした。」
「じゃ、合格ですよ。そのものずばりの物件が見つかったんで、今朝メールしました。1時以降に電話ください。」

 湯本の老舗中華のお店で探知しながらタブレットでメールを確認すると、その日の9時過ぎに支店長からのメールが着信していました。
 タイトルには「そのものズバリの物件です」と。1階、フローリング、バルコニーからは森、和室に掘り炬燵。間取りもピッタリ。
 電話すると、今日の午後なら店長が車で案内するので、お店に来て欲しいと提案がありました。その日は特に予定もなかったので、その足で駅前の不動産会社のお店に入店。

支店長は少し興奮気味で、
「こんな偶然なかなかないですよ。」
私の愛車は当時はまだ珍しい車でナンバープレートもちょっと目立つ数字の並びだったので、すぐに私だと分かったそうです。
「まぁ、最初、美馬さんの条件を伺ったときはなかなか見つからないと思ったんですけどね。」
「やっぱり掘り炬燵ですか?」
「いや、掘り炬燵は意外とあるんですよ。問題はフローリング。箱根はカーペット敷きが多いんですよ。たまたま、最近売りに出た物件でフローリングがあったので、お知らせしたんですが、まさかその日にご本人が箱根にお越しになってるなんて物凄い偶然です。」
そんな会話の後、若いスタッフの方の運転で物件の見学。

 一部、襖や壁紙の張替が必要なところはあるものの、大きな問題はなさそう。但し、まだ仕事が決まっていない。
 その旨を話すと、
「絶対、合格してますよ。吉報お待ちしています。」
「じゃ、合格通知が届いたら買いますね。」

 その1週間後、宿から合格通知が。そんな偶然がきっかけで現在のマンションに住むことになりましたが、とても気に入っています。