恩賜箱根公園で春の箱根を楽しむ
今回は春の箱根でお薦めの散策スポットを紹介しよう。芦ノ湖の湖畔にある恩賜箱根公園だ。
元々この地には皇室の避暑や海外からの賓客をもてなすための「箱根離宮」が建てられていた。
当時、ドイツから招かれていた医学者ベルツが御病弱であった皇太子(後の大正天皇)を思い、この地に保養地を設けることを進言、宮内卿であった伊藤博文の建議を経て、明治19年(1886年)に日本館と西洋館で構成される離宮が完成。
日本館は主に御座所(高貴な方の居室)として、西洋館は世界各国からの来賓をもてなす場所としても利用されていたそうだ。当時の皇室や世界の来賓の方も富士山や駒ケ岳、芦ノ湖の景色を楽しんだに違いない。
しかし、大正12年(1923年)の関東大震災で西洋館が全壊、日本館も半壊。さらに昭和5年(1930年)の北伊豆地震で日本館が一部を残して倒壊し、竣工当初の七分の一まで規模が縮小した。その後、昭和20年(1945年)に神奈川県に下賜され、翌年、恩賜箱根公園として一般に公開された。
平成4年(1992年)にはかつて離宮が建てられていた敷地の中に西洋館を思わせる湖畔展望館が落成。
1階展示室では箱根離宮の画像や各種資料が展示され、2階のバルコニーからは素晴らしい景観を眺めることができる。広大な敷地には様々な品種の桜や紫陽花、山野草などが見られ、四季折々の散策を楽しめる。今の時期なら展望館からの眺望と合わせ箱根の春を感じることができるだろう。
お薦めなのは2階の茶処「緑賜庵」でいただく冷たい緑茶と饅頭のセットだ。大きな器に注がれた冷たいお茶と甘い饅頭は散策で疲れた身体を癒すに違いない。
※上記内容は本紙2024春号第二版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。