700年前の石仏を楽しむ
小涌谷方面から国道一号線を芦ノ湖方面に進んでいくと「曽我兄弟の墓」と言うバス停がある。このバス停周辺には箱根石仏群と呼ばれる700年程前に造像された石仏が点在している。ガイドブックなどでも大きく取り上げられていないため、訪れる人はお少ないが歴史が好きな人にはたまらないスポットだろう。特に今回紹介したいのは二十五菩薩と呼ばれる菩薩像だ。国道一号線を挟んで東側の岩に3体、西側の大きな岩に23体が彫られている。
東側の黒い岩(芦ノ湖に向かって左側)には芦之湯側にうっすらと1体、芦ノ湖側に2体が確認できる。
さらに国道一号線の下に造られたトンネルを潜って西側の岩を眺めると大きな岩のいたるところに菩薩像が並んでいる。
現在は緑に覆われているが、700年前は噴気が上がり、荒涼とした風景が広がっていたようで、当時の人はこの地を地獄と考えており、旅の安全を願い石造を造像したと言われている。一つ一つの石造を眺めていると当時の旅人の気持ちがわかるようだ。
また、バス停の名前になっている「曽我兄弟の墓」はバス停から芦之湯方面に少し戻ったところにある。曽我兄弟とは日本三大仇討の一つ「曽我兄弟の仇討」に登場する兄十郎と弟五郎のことで、三基の石塔のうち左の二つは曽我兄弟、右の一つは十郎の恋人虎御前の墓と言われているが、実際は曽我兄弟とは関係なく、地蔵信仰で造られたようだ。
尚、時間があれば芦ノ湖方面に進んだところにある六道地蔵と呼ばれる高さ3.2メートルの地蔵も合わせて見ておきたいスポットだ。
※上記内容は本紙2022秋号第一版・第二版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。