箱根寄木細工浜松屋

寄木発祥の地を訪ねる
箱根寄木細工 浜松屋

 日本には経済産業大臣指定の伝統工芸品が240品目存在し、神奈川県では3品目が指定されている。鎌倉彫と小田原漆器、そして箱根の寄木細工。その発祥の地、畑宿の地に昔ながらの技とその魅力を伝える工房がある。浜松屋だ。
 実は筆者が所属する箱根モビリティサービスの乗務員新人研修では伝統的にこのお店の説明を聞くことになっており、筆者も新人時代にお世話になったことがある。営業時間中であれば、いつでも説明をしてくれるので、是非立寄って惜しいスポットだ。

 箱根の寄木細工は今から二百数十年前、現在の石川社長(箱根で3名しか認定されていない伝統工芸士の一人)の先祖石川仁兵衛がこの地で創作したと言われている。寄木細工は自然の様々な色の木材を組み合わせて幾何学模様を作り出し、薄く削り小箱や家具などに貼付したもので古くは鋸(のこぎり)でカットする挽割(ひきわり)と呼ばれる技法で作られていた。石川仁兵衛はその技術を習得して、効率的に寄木製作が出来るように大きな鉋(かんな)で削る手法を編み出したのだ。
 畑宿は標高差のある街道の中央部に位置し様々な木材を手に入れるためには都合が良かったらしい。

 40年以上前から浜松屋の店舗2階の工房で石川社長や従業員の方がその技や特徴を説明している。時間は15分程。鉋で薄く削る技(ズク張り)にも驚かされるが、厚みのある種寄木を加工してそのまま製品の形を作る無垢(むく)作りや色の異なる天然木を木工用のミシン鋸で切り取ったパーツを組み合わせて絵を作り出す木象嵌(もくぞうがん)、からくり箱の話も興味深い。
 工房の壁面には100年以上前に5代目社長が製作した木象嵌や浮世絵をモチーフにした作品がずらり、横のスペースには二人がかりで使う大型の鉋なども並んでいて、さながら寄木の博物館のようだ。
説明の後は一階の店舗で寄木の商品をご覧いただきたい。箱根旅行の記念にうってつけの土産が見つかるだろう。

※上記内容は本紙2023秋号第一版・第二版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。