箱根の温泉研究


箱根温泉研究

 箱根と言えば温泉を連想するが、場所によって泉質が異なることはあまり知られていない。
 今回は神奈川県立温泉地学研究所のご協力をいただきながら、箱根の温泉について解説したい。
  箱根の温泉は738年に釈浄定坊という僧侶が発見したものと言われ、歴史は古い。カルデラの中心に位置する中央火口丘地下の火山活動による熱と雨や雪によってもたらされる水で温泉が作られるため、箱根の温泉はすべて火山性の温泉と分類される。
 源泉は300以上存在しており、古くは箱根七湯、現在では箱根20湯と呼ばれる。複雑な地形、地質の影響で様々な泉質の温泉があるため、温泉のデパートと言われることもある。
 箱根湯本、塔ノ沢、大平台で多いのはアルカリ性単純温泉で肌触りが柔らかく、入浴すると肌がすべすべになるのが特徴である。
 箱根の温泉の中で最も多いのが塩化物泉で、中央火口丘東側にある小涌谷、二ノ平、宮城野、木賀、底倉、宮ノ下の温泉などでナトリウムー塩化物泉が汲み上げられる。マグマの塩分が含まれているため、飲用すると塩辛いのが特徴。塩化物泉は切り傷や皮膚乾燥症に効くと言われている。温泉と言われて頭に浮かぶ白い硫黄の温泉は中央火口丘に近い芦之湯、湯ノ花沢温泉で楽しむことができる。 強羅や仙石原周辺で大涌谷温泉から引き湯しているところがあるが、大涌谷には水が少なく、温泉が安定的に湧出する環境でなかったため、昭和5年に箱根温泉供給㈱が設立され、高温の蒸気に池からくみ上げた水を散布して温泉を造成する蒸気井泉と呼ばれる方法で温泉が供給されている。自然に湧出する温泉ではないが、理想的な環境で温泉を造成しているため、良質な温泉と言われている。

※上記内容は本紙2020秋号第一版・第二版に掲載した記事に加筆修正を加えたものです。